短期的な利益を求め、支え合える社会を軽視する風土が国の成長を悪化させており、成り行きでは2050年に破綻するシナリオが濃厚。AIによる2万通りのシュミレーションによりどんな対策が必要と考えらえるか?という研究結果をまとめたのが本書。幸福度の高い国を作る為に私たち一人ひとりがビジネスとして取り組むべきことが何か?という示唆に富んだ一冊。
目次
- 1.日本の財政は主要先進国中で最悪の水準
- 2.ドイツから学ぶ、持続可能な地方分散型社会の特徴
- 3.日本の地方都市が空洞化した原因
- 4.地方分散型社会実現の為に取り組むべきこと
- 5.日本の人口トレンドから考える社会のシフトチェンジ
- 6.幸福度が高い国は子育て・若者に対する公的支援が大きい国
- 7.地方で生活したい人の増加と移住を促したい地方自治体の溝
- 8.日本が先進国高齢化率トップの要因は少子化。その背景は未婚率増と晩婚化
1.日本の財政は主要先進国中で最悪の水準
日本の債務残高/GDPは237%(19年度) イタリアの2倍
<債務残高/GDP推移 主要先進国比較>
引用元:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/007.pdf
ドイツの財政改善は以下の政策でGDP(収入)を高め、支出を抑えて債務を減らす取り組みを地道に進めた結果のようです。
- 【収入を増やす】就業促進 失業給付期間の短縮、適用の厳格化
- 【支出を減らす】公的年金の給付額引き下げ
- 【支出を減らす】過剰診療の抑制(自己負担UP)による医療費削減
要は「親(国)に甘えてないで働け、そして家計(国)の為に節約しろ」という事をやったわけですね。人間易き方に流れるものですし、自律した個人が増える事が自分たちの国を守ることにつながるという意味では、まだまだ日本はヌルすぎる状況なんでしょう。
2.ドイツから学ぶ、持続可能な地方分散型社会の特徴
- 10万人規模の中小都市の中心部が賑わっている(日本は30万人規模の都市でさえ大半がシャッター街)
- 都市中心部が歩行者天国(意図的な自動車排除)、多様な世代が行き交う街作り
- 人口・人口密度は日本の地方都市より小規模(人口と活性度は別問題)
3.日本の地方都市が空洞化した原因
アメリカに倣った以下政策の影響
- 戦後の工業化政策(国を挙げて経済効率性を狙い都市部への人口流入を促した)
- 1980年代の郊外ショッピングモール型流通政策
4.地方分散型社会実現の為に取り組むべきこと
- 地方の雇用創出
- 地域内再生エネルギー自給率UP
- 地方税収増
5.日本の人口トレンドから考える社会のシフトチェンジ
開国により世界経済にさらされ増えた人口は2019年年末の仮想通貨バブル、企業の上場時の株価の推移に似ている。国民が同じ方向を向き、都市部に集中し、人口増とともに経済を成長を実現した過去。
もし生物学の密度効果のように、人間が本能的に成長限界を感じ取り、自然と少子化傾向に向かっているとするならば、株価の様に再度隆起することはなく、もう成長前提ではない行動に切り替えていかなければならないかもしれません。経済成長を前提にしないときに重要な生存戦略とは何か?それを考えるときが近づいているのかも。
参考:原因のわからないフィンランドの少子化加速
6.幸福度が高い国は子育て・若者に対する公的支援が大きい国
<世界幸福度地図(2020/3/20時点)>
<平均余命(2020/3/20時点)>
- フィンランド 幸福度:1位、平均余命:21位、債務残高/GDP:59%
- 日本 幸福度:53位、平均余命:1位、債務残高/GDP:240%
個人主義で子育て・若者への公的支援が高いフィンランドは幸福度も財政も明るい。
伝統的性別役割分担性が強く、高齢者への公的支援が高い日本は幸福度も財政も暗い。
7.地方で生活したい人の増加と移住を促したい地方自治体の溝
<東京在住者の地方移住の意向(2017年調査)>
<地方移住の不安(2017年調査)>
やや誘導的な調査かもしれませんが移住の意向は強いもののためらう現状がよく見える調査です。移住に伴う住宅の支援は多くの自治体で行われているものの、仕事の創出と生活の利便性の向上は容易には実現できない為、大きなボトルネック。また、地域住民との関係をどの様に築くか?ということも重要なアプローチ。
8.日本が先進国高齢化率トップの要因は少子化。その背景は未婚率増と晩婚化
日本の高齢化率(65歳以上の人口占有比率)は世界一の28.1%
ただその原因は長寿ではなく、少子化が最大の要因。そして少子化の背景にあるのが未婚率の増加と晩婚化。OECD諸国平均としては女性の就業率が高まるほど出生率は高まるが、日本は逆。
<東京都の出生率の推移>
都道府県別では東京の出生率が最も低く、沖縄が最も高い。(ただし、一概に都市部だからと言って出生率が低いというわけではない。)ミクロ・短期で経済効率性を求めて東京で生活し働いていることがマクロ・長期では経済成長の妨げになっているというジレンマを抱える日本。
続く。
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