コロナ禍でアフターコロナという言葉とともに、オンラインの世界が一気に加速した2020年でした。今後の世の中の変化と生き残る企業の在り方を占う一冊。
- 1.中国民間企業、アリババなどの経営幹部の社会的責任に対する考え方
- 2.アジアのDX事例
- 3.アフターデジタルの産業ヒエラルキー
- 4.DX、OMOについての誤解
- 5.DXに取り組む上で重要な考え方と必要な能力
- 感想
1.中国民間企業、アリババなどの経営幹部の社会的責任に対する考え方
- 日本ではユーザーから得たデータをアップセル・クロスセルにしか使わない
- ユーザーには代金を頂いているので提供価値で還元するのは当たり前
- 個人情報を提供してくれるユーザーに報いるためにさらなる提供価値を
2.アジアのDX事例
- 中国の都市部の現金使用率5%未満
- 都市部の自転車のシェアリングサービスは乗り捨て自由
※0.5元〜1元/30分、乗り捨て場所自由!便利すぎんか・・・
- アジアのスーパーアプリGrab (MaaS:Mobility as a Service)
人やモノの移動に関わるサービスから金融業へ拡大
タクシー配車・ライドシェア → デリバリー → 融資
- エストニアの行政システム (GaaS : Government as a Service)
役所に行かずとも証明書発行や転籍手続きパスポート更新がネットで完結
- Wechatが提供するミニプログラム
零細企業や個人事業主でも10万円程度でWechat上に店舗ページを構え、メニュー掲載、注文、事前決済サービスが可能となるDX。(LINEの公式アカウントも近しい仕組みだと思います)
- どこでも受け取れるラッキンコーヒーVSスターバックス
年500店舗の出店を続け売上成長を続けていたスターバックスが、2018年売上減少に転じたのはフードデリバリーへの取り組みの遅れから。一方ラッキンコーヒー2018年事業をスタートし、どこでもだれでも受け取れるという利便性提供から1年で2000店出店の急拡大。
スターバックスはその後、提供商品の価値を損なわないデリバリーを追求してフードデリバリーにも参入。サード・プレイスという価値だけに固執せず、顧客ニーズの変化に合わせスターバックスらしいサービス提供を実現したことで復調。
(その後ラッキンコーヒーは2020年粉飾決済もあり上場廃止するものの、コロナ禍では店舗体験重視のスターバックスが苦戦する中、オンラインでの顧客接点強化で復調。数年に渡る競争はDXの重要性と環境変化の中での顧客心理の変遷も感じ興味深いです。)
3.アフターデジタルの産業ヒエラルキー
- プラットフォーム企業>サービス提供企業>メーカー
<中国の例>
上位:アリペイ(Alibaba)・WeChatペイ(Tencent)などの決済プラットフォーマー
中位:フーマー(Alibaba)、Mobikeなどのサービサー
下位:メーカー
※顧客との接点を持ち、行動データを持つ企業が優位となる
- プラットフォーマーに対抗するD2C戦略
プラットフォーマーを介さずに直接顧客とつながる戦略(NIO、NIU、ズールー)
GAFAのようなプラットフォーマを利用せず、圧倒的な利便性で顧客を囲い込み自社が提供する商品とサービスを他社と比較されずに利用してもらえる戦略。
- サービス提供事業者に保険商品をOEMで提供する衆安保険
返品運賃保険、飛行機遅延保険、高温保険、糖尿病保険といったユニークな保険商品をサービス提供事業者を通して消費者に提供する衆安保険。商品はサービス提供事業者の顧客のカスタマージャーニーからリスクを洗い出し企画開発している。アリババのアント・フィナンシャル、テンセント、平安保険の3社のジョイント・ベンチャー。
※日本も同じ産業構造になるか?
中国ほどのプラットフォーマーの絶対権力は無いもののほぼ同じ構造(プラットフォーマ>サービス提供事業者>メーカー)になる事が予測される。
<中国と日本の違い>
【国の特性】法律は日本はホワイトリスト方式、中国はブラックリスト方式
(やっていい事だけを定めている日本とやってはいけない事を定める中国ではスピード感に違いが出る)
【経済】人口規模の差。低賃金で暮らせる環境の中国とその逆の日本。
(プラットフォーマの強さは規模と相関)
【文化】外食文化が根強い中国、接客の質へのこだわりの違い
4.DX、OMOについての誤解
- 実は全購買のEC割合は20%しかない
(米国は15%未満。アリババがフーマーを展開したのは80%を獲得するため)
- 中国10億人のECはレッドオーシャン
(CPOが年々値上がりしている。サンプル配布をオンラインからモール内の自販機に切り替える化粧品メーカー)
5.DXに取り組む上で重要な考え方と必要な能力
- 属性ターゲッティング→状況ターゲッティング
(顧客を属性データだけでなく行動データで捉える)
- 高い頻度で顧客と接点を持ち最良のタイミングで顧客の状況に適した価値を提供
(例:平安保険のLife Customer Contact History)
- 便利か?楽か?使いやすいか?楽しいか?その全てが重要
(ユーザビリティ、ゲーミフィケーション)
- 製品は顧客接点の一部で、アプリ、店舗、イベント、コールセンターと同列
(全ての接点を通してどんな価値を顧客に提供するのかが重要)
- 顧客の生活が改善したり、成功したりすることが提供価値でありゴール
(故に成功から逆算した顧客の行動の流れに寄り添った製品・サービスの開発が必要)
- 実際にユーザーの状況を確認し検証するプロセスを持つ
(グループ・インタビューやアンケートは無意味。実際のプロトタイプで検証する)
※DXで何を実現したいのか? 〜アリペイとWeChatペイの送金機能の違い〜
『おごるよ!』『いやいや出しますよ!』『いやいいから!』そんなやり取りをアプリで実現できるのがWeChatペイ。敢えての非効率な仕様はコミュニケーションの機微を体現する為。
<機能>
アリペイ:送金されたらすぐにウォレットに入る
WeChatペイ:受け取るを押すとウォレットに入る(押さないと一定時間で返金される)
<各社のミッション>
アリペイ:商取引の円滑化
WeChatペイ:全てをコミュニケーション化する
※タクシー配車アプリDiDiのシステムは従業員の人生を豊かにする
『人間には性悪説も性善説もない』『良い行いも悪い行いも環境が導く』という考えに基づき、DiDiはドライバーに業務ツールとして提供しているアプリを通じてドライブデータを取得し、不正が起こり得ない実行動で評価をする手法を用いているそうです。本書籍の発行元の会社の方から聞いたエピソードでは、あるドライバーは『DiDiのドライバーになってからいい人になった』と家族に言われるほどの影響があるとか。レベルの高い企業の社会貢献はこういう事だなと思いました。
中国の配車アプリ・滴滴出行(DiDi)とは - デジタルがリアルを包み込むってどういうこと?第2回 | - エクスペリエンス・デザイン・パートナー
感想
DXが進めば、五感全てを感じるリッチな空間・人によるリアルのサービスとライトなデジタルサービスの両面を提供できる企業当たり前になり、その包括的な価値で企業の優劣が判断されるように感じます。
『どんなタイミングで?どの感覚に?どのような価値を提供することが誰の悩みを解決したり幸福をもたらすのか?』 それが重要なテーマであるのはもちろんですが、個人的には企業が生み出すDXが人の行動や社会を法律とは違う形でポジティブに変革させる可能性をがあることに魅力を感じました。
※補足
本要約では割愛していますが本書には実際にDXを企業の中で企画実践するときに留意すべき点についてもしっかり書かれています。